「アルゴリズムが世界を支配する」という本を読んでみた。
Kindle版は100円と値段が安いので割となんとなく買ったのだけど、内容は面白かった。
アルゴリズムが世界を支配する (角川EPUB選書)
冒頭のアルゴリズムを使った株売買の話は普通に面白い。
その黎明期の話はまさにhackerの仕事の話だ。
その後、ウォール街がコンピュータやアルゴリズムに詳しい技術者や学生の求人を高給で独占して集めてしまい、シリコンバレーに人が来なくなってしまった時期があるという。
各章で、他の分野でのアルゴリズムを導入して革命的な成果を上げた事例が紹介されていて、どれも興味深い。
まだ人工知能が出てきていないのだが、人工知能が流行り始めている現代ならばさらに面白いアプローチができるだろうし、もっと多くの分野で大きな成果を掘り出すことができるだろうと思った。
最も面白いと思ったのは、第7章「人類をカテゴライズする」で出てくるNASAの人物の分類評価アルゴリズムだ。
任務をうまくこなすためには、メンバーの性格を分類して、合わないメンバーの組み合わせを避けて、合うメンバーの組み合わせにするとうまくいくのだそうだ。
分類は、
1. 感情重視型の人 – 女性に多いタイプ
2. 思考重視型の人 – 現実主義的なタイプでもある
3. 行動重視型の人 – セールスマン的なタイプ
4. 内省重視型の人 – 興味のあるものに没頭して、まわりが見えないタイプ
5. 意見重視型の人 – 勤勉な政治家タイプで命令形と断定形で話す言葉が多い
6. リアクション重視型の人 – 反発者ともいう, 自発的で独創的, いたずらや冗談が好き, 発明家や起業家に多いタイプ
と、6つに分類される。
NASAの宇宙飛行士には内省重視型の人は向かない。思考重視型の人が多く採用されている。
組み合わせの問題もあり、
思考重視型3人と感情重視型1人を組み合わせるのはよくない。
思考重視型4人にしてもトラブルの可能性がある。
リアクション重視型1人と意見重視型1人などをほどよく入れるのがよい。
リーダーは思考重視型の中でも、他の型の要素を持ったバランスのとれた人にするのがよい。
これらの人物評価アルゴリズムでチームを作ることで、NASAは宇宙飛行士のトラブルをうまく防いで、任務が円滑にこなせるようにしている。
これを読んで自分が思ったのは、血液型による人物の性格分類というナンセンスな方式がなぜ無くならないのかということだ。
退職してしまう前の会社でも、公式に取り入られたものではないのだけど、血液型による性格の分類の信者が多くて、部下に血液型を尋ねて性格を血液型で分類して、どう扱うのか参考にしている人がいた。
たぶん、血液型での性格分類が当てはまる人が多い、くらいに思っていたのだと思うが。
自分が思うに、この血液型の4つの分類で、たまたま少数のサンプルが偶然にNASA方式の6種類の分類と合ってしまって、NASA方式のチーム組み合わせと同様に血液型で同じようなチーム組み合わせがうまくいったように錯覚して勘違いして血液型分類を信じてしまっているのではないかと思う。
偶然に血液型分類で部下を扱うのがうまくいくことがあると信じてしまうと、うまく行かないケースは誤差とか血液型が性格に顕著に出ない場合があるくらいにしか思わず、血液型分類そのものを自分で否定しきれないだろう。
きっと血液型の性格分類はそういう信者がいなくならない限りは無くならないと思う。
NASA方式でも何でもいいので、実績のある性格分類が普及しない限り。