ワープロ専用機はなぜ廃れてしまったのか。というのが定期的にネットで話題として上がる。
1980年代後半くらいには、まだ台数としてパソコンとワープロ専用機が同じくらいで競っていたのだが、その後急速にワープロ専用機の市場が廃れてしまった。
当時の雑誌によるワープロのメーカー各社へのインタビューで「ワープロはいずれなくなるのですか?」という質問への回答がある。
ワープロは、いずれなくなるのですか?(1989年の雑誌より) pic.twitter.com/5kzFcpyUd3
— 福田 譲 (Yuzuru Fukuda) (@Yuz0130) January 29, 2021
日本のメーカーの先の読めなさを皮肉るネタとして何度も取り上げられていたりする。
上記の引用だと、残念な感じだが、元の雑誌に掲載されている全文だと、もう少しマシな感じらしい。
たまに話題になるワープロの件
— ちゆ12歳(19周年) (@tiyu12sai) February 5, 2021
ソースを確認すると、https://t.co/uo3PEiUi5u ではカットされている部分で、少し印象が変わるかもです
(質問への回答は外していますが、富士通の「通信が普及し、将来的には誰もが1日に1回はアクセスするようになる」とか、当時の私よりはずっと未来が見えてます…) https://t.co/g4OHKbFRRa pic.twitter.com/Z1lnDSLCAq
メーカーの見通しとして、ワープロに対する需要は無くならずに増えていくというのがあったのだろう。
実際、ワードプロセッサーそのものに対する需要はこの後にもどんどんと増えている。
今やワープロなどを使わずに手書きをすることがほとんど無くなってしまった。
だが結局、その需要の受け皿としてパソコン用のワープロソフトやオフィスソフトが普及し、それに全部市場を取られてしまったので、ワープロ専用機が絶滅してしまった。
なぜワープロ専用機はパソコンに負けたのかというと、会社で業務用に使うオフィス需要という大きな市場で本当に必要とされていたものをワープロ専用機で提供できなかったからというのが大きいのだと思う。会社で1人1台まで普及する大きな市場だったのに。
まず第1に、プリンターの問題がある。
この時期からパソコン用のプリンターが高性能化しポストスクリプト対応の安価なものが普及しはじめて、印刷物の印字品質がどんどん向上した。反面、ワープロ専用機はプリンターを内蔵しているので、その恩恵を受けられなかった。
ワープロ専用機はプリンターを内蔵しているせいで、むしろコスト面で会社で1人1台に導入しづらくなってしまった。
あと、プリンター自体、機械部品でできているせいで故障は避けられないし、修理が高くついたり、年式が古いワープロ専用機はもう修理できないという問題がある。キーボードも消耗品だ。簡単に交換できて、メーカー間で統一された規格とかあれば良かったのにと思う。
(FAXは、なぜ廃れなかったのかというのが不思議という話がある。内蔵されているプリンター部分が感熱紙方式で故障しにくいのと、印字品質に高品質が求められなかったというのがあるのだろうと思う。)
第2に、オフィスソフトの性能向上が著しかったというのがある。
会社とかの業務の文書作成で求められるものとして、単純に文字のみを印刷したいというのは少なく、写真や図表やグラフを文書に挿入した文書を作るというニーズこそが真のニーズだったのだと思う。パソコンだと写真を取り込んだり、その後に普及するデジカメの写真をそのまま利用できたりするのだが、ワープロ専用機にはそれができない。表計算ソフトで作った表やグラフも必要なのだが、ワープロ専用機では表計算やグラフ作成ができない。
第3には、家庭用の小さい市場向けに細々とワープロ専用機が生き残るというのも、パソコンが家庭にまで普及したせいで、市場が完全に無くなってしまったというのがトドメになった。そもそも家庭でワープロを使うという用途そのものが少ない。下手をすると年賀状の宛名印刷だけとか。パソコンに実質無料でバンドルされているオフィスソフトで事足りるし、年賀状については宛名印刷だけでなく全部を印刷できるようになり、CD-ROM付きの年賀状作成用ムック本が売られて毎年の定番商品になった。ワープロ専用機はそういう家庭用の小さい市場に合わせた製品を作るコストが掛けられなかったようだ。